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司法書士 新谷健太郎

弁護士 斎藤 和将
ふじ法律事務所
所長弁護士
(東京弁護士会所属)
東京都多摩市愛宕4-22-20
センターヒルズBLD302

公認会計士・税理士 舟生 俊博

公認会計士・税理士
舟生 俊博
さくらみらい国際会計事務所
アカウンティングファーム代表

司法書士 新谷健太郎

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しながわ法務司法書士
事務所 所長
東京都品川区
西五反田2-13-8

突然の争族で「争族」へ!会社も家族も崩壊 STOP!争族 幸せのための事業承継

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シリーズ STOP!”争族”突然の争族で会社・家族が崩壊

絶対に株式を分散させてはおけない!計画的な事業承継を!

明日、突然社長が倒れたら、会社はどうなるのでしょう?家族は大丈夫ですか?
「まったく問題はない」と言えるオーナー経営者の方はいないと思いますが、その準備の状況はかなり違いがあるようです。混乱はするが何とか他の経営陣が会社を切り盛りしていけると考えている会社から、ハンコの場所も分からなくなってしまう会社まで。
後継者の育成ももちろん重要ですが、現在の事業承継問題は後継者育成以外の問題も多いようです。事業を承継するために、どのような準備が必要なのか、相続・事業承継に携わる弁護士、公認会計士、司法書士に聞きました。

事業承継のトラブル事例 -他人事ではない現代版お家騒動-

「株主」=「経営者」であることが多い中小企業では、事業継承にさまざまなトラブルがついてまわります。しかし実際に体験してみなければ、わかりにくく、他人事のように感じてしまうオーナー社長も多いのではないでしょうか?
2006年に相続トラブルが表面化して、休業へと至った人気の布製かばんメーカー、一澤帆布工業株式会社の事例は記憶に新しいかもしれません。

イメージ

一澤帆布工業株式会社は1905年創業。相続が発生したのは3代目の無くなった2001年のことでした。事実上、4代目として既に社長および会社の経営を引き継いでいた三男夫妻と従業員一同vs長男+四男が、3代目の父の所有する株や財産、営業権やブランド(商標権)の相続をめぐって、8年に及ぶ裁判を争うことになった事例です。2通の遺言書の有効性を争う審議はもつれ、2度にわたる最高裁の判決の結果決着しましたが、今現在、「一澤帆布」というブランドは失われたままです。オリジナリティと職人の実直な技術がファンから愛され人気となった老舗ブランドのイメージ、ブランドそのものの継承は事実上かなわなかったといえるでしょう。争った8年の歳月で損なってしまった価値は計り知れないのです。

一澤帆布の場合、4代目の尽力もありブランド価値が先代の時代より急上昇したことで、財産が思わぬ額となり、相続争いを加速させた側面があります。ブランドの価値を握ってたのは、代々培われた職人技や専用の帆布生地、と製品愛好者でした。争いの結果、株式や社長の座を突然握っても、職人や帆布生地を調達できなかった一澤帆布工業は、事業を承継できなくなり、愛好者へ製品を供給することができなくなりました。「継ぐべき価値、会社の価値の源泉はなんなのか」見つめ直し、共有することも重要な事業承継計画への第1歩なのです。
事例のように「後継者争い」は代表的なトラブルです。事業継承には言うまでもなく後継者が必要です。後継者候補がいなくても、複数いる場合も争いに発展します。一澤帆布の事例では、オーナー社長が生前に後継者を決めて関係者の理解を得られていたにもかかわらず、死後、「争族」となりました。中小企業のオーナー社長が後継者に事業を承継するということは、実は、3つの要素を「譲る」ということを念頭におく必要があります。

公認会計士・税理士 舟生俊博

3つの要素を検討

  • 「社長の座」を後継者1人に譲る
  • 「会社の所有」(=必要な割合分以上の株式を)を後継者に集中して譲る
  • 「事業以外の財産も含めた財産」を相続人全員に譲る(分配する)

中小企業では株式が分散することは経営の意思決定を阻害することになりかねませんので、後継者に株式を集中させることが求められます。

また、「相続税の資金準備」のトラブルも侮れません。事業に必要な資産(会社の土地や建物、機器)の相続では、売却して現金化することができないが評価額が高くなる財産を相続する場合も多いものです。また、自社株式の評価額が本人達が考えているよりも高額になることによって納税額が大きくなりすぎてしまったが、どうにかならないか?という相談を受けることもあります。
せっかく後継者への集中した相続が合意できたものの、その相続税が支払えず、やむなく分割せざるを得ない、事業を継続できない、物納せざるを得ないということの無いように、計画的に準備を進めましょう。

実際の相続のシーンでは、遺産の分配以前に、「財産の把握・確定」という点でもトラブルは多いようです。
資産はあってもそれが相続人に把握できなければ継承することはできません。パソコンのログインパスワードから貸金庫の開け方まで、「見えない資産」や自社株式、美術品や骨董品など「価値の評価がむずかしい資産」は様々なトラブルを引き起こします。これからは、インターネットバンクの決済口座なども社長本人しかわからない「見えにくい資産」として、注意が必要かもしれませんね。
さらに、オーナー経営者の皆さんは、事業上必要な短期・長期の借り入れが、必要不可欠です。金融機関に毎月返済している負債は「見えるマイナス財産」ですが、たとえば、経営者仲間の連帯保証人になっている場合は「見えないマイナス財産」として要注意です。
「見えない資産」の問題は、弁護士が介入して裁判所が財産を確定させる、というプロセスを踏んだとしても、「不明な財産が出たらその時点でまた協議します」という項目が書かれる位、難しい問題です。社長が元気なうちにぜひ財産目録を作る、また、評価の難しい資産を専門家に依頼して相続についての目安を立てる、というだけでも一大準備といえるでしょう。

弁護士 斉藤 和将

相続トラブルの回避のため、遺言を残すということは、よく知られていることですね。さらに、事業承継をされる企業オーナー社長であれば、是非検討したいのが、会社の「定款の活用」による株式の分散防止です。つくったきり、金庫にしまったままになっていませんか?平成18年の会社法改正により、定款は会社の事業承継時に活用できる様々な種類株式ーたとえば「譲渡制限付株式の発行」や売渡請求のための項目を設けることがが可能となりました。一澤帆布の事例でも、たとえば、拒否権付種類株式を発行することで、トラブルを回避できたかもしれません。また、定款には、企業のビジョンを盛り込んでオーナー経営者の意志を明確にすることも可能です。定款に書かれた内容は、公開された企業の意思です。一澤帆布の事例のように全くことなる2通の遺言書の正当性が争われた場合には、より定款に記載された内容に近いということが、1つの判断になる場合もあるのです。

司法書士 新谷健太郎さん

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事業承継のフロー

事業承継プロジェクトのフロー

自分が死んだらどうしよう・・・。
息子を社長に・・? 従業員に・・・? 廃業・・・? 売却・M&A?

事業承継プロジェクトの流れ

相続人の間で利害関係が複雑に絡み合い、10年以上も決着がつかないままという事例もあります。“争族”を防ぐためには事前の対策が不可欠です。特に事業継承においては、事業再生がセットで問題になることも多く、1年程度の期間では対策が十分に整わないこともあります。早めの対策をおすすめします。

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事業承継を決意したら準備開始 あなたの会社は「残す」価値がありますか? -事業承継の検討にあたって、まずは事業価値の源泉を見つめブラッシュアップを-

3つの選択肢 1,廃業 清算 2,事業承継・・・親族・親族以外(社内幹部 外部) 3,売却(M&A)

多くの中小企業は赤字体質・過剰債務であり、なんとか黒字化しても、キャッシュが残らないと悩んでいる経営者は多いと思います。大企業であれば社長が倒れても会社運営自体は滞らないでしょう。しかし中小企業では、社長自身の営業力やコネクション、信用が事業価値の源泉であることが少なくありません。全ての苦労を社長ひとりが背負っている会社をどう継がせることができるでしょうか?

昭和の事業承継の問題は後継者育成だった-いかに息子を優秀な経営者に育てるかという課題です。しかし、現在の事業承継の問題は後継者不在ということのようです。誰も会社を継ぎたいと思わないという課題です。
中小企業の事業承継では、事業再生と併せて検討する必要があることも多いのが実情です。会社自体をいかに魅力的な会社に改革できるのかが大きなポイントになってきます。
そこでまず、最初に「会社の事業価値の源泉は何か?」ということを良く考え分析してみることが必要になります。
事業承継の場面だけでなく、会社の事業価値の源泉、競争力の源泉は何かを見極めて、時代の変化に合わせながら、磨き続けていくことを日々実践していくことは、企業成長には重要です。事業承継プロジェクトとは、「事業」というものを対象に考えて、会社の将来を検討することに他なりません、。基本に戻り、まずは「事業価値の源泉」を考えることからはじめるのが良いでしょう。
また、中小企業では、社長自身が事業価値の源泉であることが多いのです。例えば、ものづくりの現場で社長のみが競争力のある技術を持っていて、お客様はその技術を信頼して仕事を依頼しているケースなど多くの町工場にあります。また、社長自らの営業で仕事の大半が得られている場合なども多いでしょう。多くの会社では、ワンマンな社長がすべての意思決定を自分自身の経験と勘で行い、社長の先見性と決断力で会社が成長しているという状況ではないでしょうか。
こう言った会社の場合、極端な話、社長がいなくなると事業自体が立ち行かなくなってしまう可能性があります。

公認会計士・税理士 舟生俊博

残すべき会社になるために、事業価値の源泉を見つめなおそう! ~会社の事業価値=会社の強み~

SWOT分析などを用いて、会社の強みがすべて社長に依存していないか確認しましょう。現状赤字体質でも、伸びしろのある事業、今後成長しうる事業の芽があるなど魅力を明確にして、事業承継をする意図を明確にします。

もし、社長がすべての源泉の会社を将来承継させたいならば・・
→社員教育を施すなど、それを次の人が引き継げるよう磨く必要があります。
新社長を支えるために会社全体で組織を変えていかねばらならいので、これだけで10年かかることもあります。

強みだけでなく、W=弱点も探さなくてはいけません。例えば過剰債務がこれにあたります。資金繰りができなくて返済が滞っている、もしくは利益のほとんどが借金の返済に回っている、などです。再投資をして事業を成長させるための資金が返済に回っているので、会社が大きくなっていかないのです。弱みを解消するためには、例えば事業再生などの外科手術が必要になるかもしれません。事業再生というと、民事再生法等を使った法的な手続がまず思い浮かびます。債権者の過半数の合意を得られれば借金の一部の免除が可能という制度です。また、金融機関だけを対象にした債務の減額を求める方法などが有効な場合もあります。さらには、個別交渉によって債務の返済条件を変更するというやり方もあります。どれを選ぶにしろ、10年くらいの長期的な計画を作ることによって今後返済できる金額が見えてきます。

事業承継を機会に借金も資産もリサイズすることも検討すべき事項です。

会社の強みを知り、さらに磨く、弱みを知り、解決への道筋をつける。 ~事業リフォームで競争力を高めよう!~

事業リフォームは、手段・方法は企業ごとにオーダーメードで、経営陣が中心に事業構想を作っていきます。必要があれば、外部のコンサルタントを活用した方が効果的に進むことも多いようです。例えば、後継者育成、社内ルール作り、収益性の向上、財務リストラや財政面の強化などを長期的なスパンで計画していきます。それこそ外部との取引条件を変更したり、給与額の決定方法をワンマン社長の一存ではなく、報酬規程などで決めるなど、組織で動く体制作りです。
個人力から組織力の経営へ、経営陣の意識改革も必要となるでしょう。事業承継を機に、今までやっていた事業と別に儲かる事業があるならば、大きくかじ取りをして収益構造の転換も検討すべきだと思います。

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事業承継計画書を作成しよう -将来に残す価値のある起業も計画がなければ、残せない- 誰に?なにを?どうやって?どのくらい?いつのタイミングで?

事業承継では、社長の椅子(経営)と、会社の株式、個人保有だが事業で使っている財産(工場用地だが名義上は個人所有の例など)をどうやって次世代に引き継ぐかを決めていきます。
相続人の中から次期経営者が決まれば、その社長の椅子を引き継いだ人に会社の株式や事業用個人財産を相続させ、その他の財産を他の相続人で分けて、不均衡になった部分をどのように調整するかという方向で調整を図ることになります。
相続人の中から次期経営者が出てこない場合には、会社を閉鎖するか、従業員が引き継ぐか、外部の者に任せるか等を検討しなくてはいけません。会社は被相続人であるオーナー社長の人生そのものである場合も多く、創業者の想い・志を引き継いだ形で経営を続けてくれる人へ承継を行いたいという側面と、他方において、実際に経営能力や資金的にも経営を引き継いでいける人を選ばなくてはいけないという側面があり、バランスよく検討しなければいけません。

弁護士 斉藤和将

事業承継で検討すべき課題は多岐にわたりますが、それを事業承継計画というカタチにまとめます。

1.現状把握

(1)社長の財産:個人の財産、事業用の財産、株式など。
   まずは財産目録を作り、マイナスの財産も漏れなくリストアップしましょう。
(2)事業継承関係者:親族、共同経営者など事業継承の関係者を洗い出し。
   上場していない中小企業では株主も重要です。
(3)会社の状況:財務、従業員、営業所、取引先、工場、組織風土など。
   会社のすべての状況を把握することが必要になります。

2.10年後の理想の会社の状態を定める

(1)社長の財産は誰に渡っていてほしいのか?
(2)だれが社長の椅子に座るのか?
(3)10年後の事業計画は?
(4)関係者のライフプラン

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ここまで決まれば、あとは現状と10年後の理想とのギャップを埋めていく作業になります。この事業継承計画は作成するのに1年、そして計画を遂行するのに少なくとも5年と言われます。早めの対策が不可欠なのはこのためです。

計画にはまず、事業自体の計画から始めます。売上、利益などが今後どのように成長していくのか計画を立てます。次に現社長及び後継者がどのようなプロセスを経て、いつのタイミングで社長の座を譲っていくのかを計画します。そして、事業用財産や自社株式をどのタイミングで移動させるのか、贈与税や相続税対策も検討しながらプランニングしていきます。会社が成長していけばいくほど、基本的には会社の評価額(株価)は高くなっていきます。経営権の確保、資金の流出を最小限にコントロールする、株式の分散を回避するなどなど課題は多いですが、その課題ひとつひとつ検討してその解決策を計画に織り込みます。
これら検討して、このような事業承継計画表などに落とし込んでいきます。

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事業承継計画表の例 <中小企業庁「事業承継ハンドブック」より引用> 

基本方針

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事業承継計画を実行しよう 事業承継を成功させるためにしておきたい3つの手段

先代が元気な間は、相続で兄弟が揉めるなんて想像もできなかった・・・という事例は多いものです。我が家に限って・・・と思いたい気持ちはわかりますが、たとえば社内に後継者候補が複数いた場合、それぞれが心から「会社の将来のため」を思っても、戦略や経営方針で意見が対立してしまうことはあるでしょう。
このような事態で重要となるのが、迅速な意思決定を行うための「議決権」の確保です。
たとえば、株主総会において重要事項(取締役の解任など)を決議するには、2/3以上の議決権が必要です。
詳しくは会社は誰のもの?株式シェアと議決権

株式や経営権、事業用資産を後継者に確実に集中相続させるために、以下の3つの手段を組み合わせて、
準備しましょう。

生前贈与で確実でスムーズな株式移動

遺言による相続は、死んでから、こうするように・・・。というメッセージを残すための最強のツールですが、本当に遺志どおりの承継がなされるのか、残念ながら自分の目で確かめることはできません。確実に、後継者の権利を確定する方法があります。現経営者の生前に自分で株式の名義を変更する=後継者へ譲渡や贈与する 手続きを行えばいいのです。
また、自分の死ぬタイミングによっては、自社株式の評価額が変わってしまい、思わぬ相続税額に膨れ上がる場合もあるかもしれません。現在のように不況で、会社の株価が下がっているタイミングを見計らって、贈与を実行することで、相続額を抑えたスムーズな次世代への承継が可能となるのではないでしょうか?
しかし、もちろん注意が必要です。生前に贈与すれば、好き勝手に後継者1人に保有株式すべてを相続できるわけではなく、後継者へ生前贈与で分け与えた財産については、遺産の前渡しとみなされます。つまり、他の相続人がいる場合には、遺留分を侵害しないようにしなければいけません。遺言書で生前贈与された以外の財産についての分配を指定したり、生前贈与分についての確定を意思表示しておくことが大切です。
後継者に買取資金が用意できるならば、生前に譲渡するという方法もあります。譲渡の場合、相続時の遺留分の問題から除かれるので検討する価値はあるでしょう。

公認会計士・税理士 舟生俊博

遺言書で事業用財産を後継者に集中させる

事業承継ではいかに事業用の財産である「自社株式」と「個人所有の事業資産」を後継者に集中するかが重要です。これらの財産が後継者以外の相続人に分散していくと後継者が思った通りの経営を行うことが難しく、事業承継後の経営が行いにくくなってしまう可能性があるからです。また、相続人には法定相続分や遺留分といった財産をもらう権利があります。いかに公平に財産を分割するとともに、事業用の財産は後継者に集中するかというトレードオフの中で、相続人の納得解を探すことが重要なポイントです。

中小企業の円滑な事業継承のためには法定相続人に対する遺留分を考慮することが欠かせません。遺言書があれば、なるべく遺言書に残された故人の遺志を尊重した相続を原則とします。遺産分割と遺留分については、遺言書も含め民法に則り手続きを進めます。

詳しくはこちら  STOP相続1へ

中小企業においては、被相続人の個人資産は大部分が自社株式や事業用の資産ですので、事業後継者にそれらの資産を集中して相続させようとすると、他の相続人の遺留分を侵害してしまう場合がありますので注意が必要です。
問題を解決するためには万能ではありませんが、まずは遺言書を作成することが重要です。さらに、生前に自分が死んだあとに会社はどうしてほしいのか、後継者はどうしたいのか、後継者以外の相続人には、どのような人生を歩んでもらいたいのかを伝えて、皆と想いを共有しておくことが重要になると思います。そして、相続人それぞれが、遺産分割の意味を理解し納得する環境をつくることにオーナー経営者は注力し、遺留分が侵害されるようなケースでも後継者に託された責任面なども理解を求めて、遺留分の放棄ということも具体的に対応しておくべき課題です。遺留分放棄に関しては、「遺留分に関する民法の特例」などを活用することで、遺留分を放棄する相続人をなるべく煩わせることなく手続を進める配慮なども必要になってくると思います。

弁護士 死闘和将

定款見直しで行う経営権の集中と株式分散防止

定款は会社のルールブックです。平成18年の会社法の改正によって、定款の内容の自由度は非常に大きくなりました。種類株の発行や取締役会役員の人数など、定款を改正することによって事業継承の方向性は大きくシフトします。事業継承においては、遺言が家族や親族など対内的な発信機能を果たしているとすれば、定款は従業員や取引先など、対外的な発信機能を果たしていると言えます。
事業承継で一番大事なことは、会社経営者の交代と財産の相続と言う物質的なモノの移動だけでなく、亡くなった会社経営者、すなわち被相続人の想いや会社の理念を後世にきちんと伝えていくことではないでしょうか?被相続人が会社の創立者であればなおさらです。遺言と定款は、事業継承の際の対内的、対外的な「経営者の想い発信ツール」となるのです。

では、具体的に定款上でどのように記すことが有効なのか見てみましょう。

株式の譲渡制限規定を設置・・・

平成18年より前に定款を作成し、見直しをしていない場合、「譲渡制限規定」を設けていない会社もありますが、速やかに定款を変更し、株式譲渡制限会社(すべての株式の譲渡について会社の承諾が必要な株式会社)とします。こうすることで、新会社法上では、後述する「議決権制限株式」の発行がやりやすくなる等メリットがあります。

株式の売渡請求の設定・・・

万が一、相続により後継者以外の相続人に会社の株式が渡った場合、会社が相続人に対し、株式を買い取る(売渡を請求する)ことができるようになります。ただし、自社の株式を買い取るということは、キャッシュアウトを伴うので、会社にとっては減資となり、余剰金が必要です。

種類株式の発行・・・

種類株式とは、普通株式と議決権や財産権などが異なる株式のことです。事業承継で、活用される代表的な種類株は議決権制限株式や拒否権付種類株式です。またその詳細内容は、会社ごとに定款で、定めることが可能です。

・議決権制限株式

たとえば、財産権(配当を受け取る権利など)はあるが、取締役解任など、株主総会決議での議決権を持たない株式です。つまり、会社の重要な意思決定にはかかわらない株主とすることで、経営権を集中させます。

・拒否権付株式

大幅な生前贈与を実行すると、元のオーナー経営者が実験を奮っていても、株式持分が後継者に移動しているので、若い後継者が暴走して、早まった議決を通してしまわないとも限りません。拒否権付株式(黄金株という)を元経営者が持ち、決議に当たることで、贈与後も安全な企業統治を実現させることが可能です。だたし、この黄金株が、後継者以外の手に渡らないよう、配慮することも重要です。

上記以外にも、スムーズな経営者交代ついては、定款の前文によってこの経営者交代についてメッセージを発信することが可能です。定款前文を変更し、会社の理念・将来への希望・新経営者へのメッセージ・従業員と取引先へのメッセージを盛り込むことによってスムーズな経営者交代が促進されるのです。
定款もただ単に遺産分割や種類株式の規定をしているものではなく、遺言と同じように、家族や従業員など残された人へのメッセージだということは忘れずにおきたいですね。

司法書士 新谷健太郎さん

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全員がHappyな事業のmiraiを描く とにかく始めよう事業承継プロジェクト -重要なパートナー選び-

事業承継には検討すべき課題が大変多く、また難しい課題も多いです。
創業者の想いを継承しながらも、関係者のライフプランを考慮して全員が幸せになるための未来像を描く必要があると思います。廃業が全員の幸せにつながる方策ということもあります。また、親族以外へ売却(M&A)が良いということもあるかもしれません。柔軟な発想で幅広い検討を一度行うのがよいでしょう。
これまで述べてきたとおりに、事業承継は経営そのものの問題である一方、親族間の財産の分配の問題でもあります。方針の決定までには、なかなか社長個人の財産の内容を開示したり、後継者選択など内部の人間に相談できないデリケートなシーンも出てきます。また、解決に必要な要素は、民法の知識、会社法の知識、会計の知識、相続税対策等の税金の知識、財務面での知識広範囲に渡るとともに、個別の課題に具体的に解決するために知識を生かす経験が必要になります。一歩引いた専門知識を有した第三者のアドバイスが必要となると思います。事業だけでなく家族の話も相談できる相談相手を見つけましょう。

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